万病や穢れを祓う仏である薬師如来は多くの仏門宗派で信仰の対象となり、古くから優れた彫刻が全国に残ります。
鵜田寺に安置されている薬師如来像は、日本最古の説話集である平安時代の「日本霊異記」に登場する薬師如来像であると伝えられる大変古い仏像です。
日本霊異記では、とある僧が鵜田の里という所から大井川を渡る際、河原の下から「我をとれ」と言う声が聞こえたために、僧が穴を掘ってみると薬師如来像が出てきたといいます。僧は野田に鵜田寺を建立し、欠けていた薬師如来の耳を直して本尊として据えたというのが日本霊異記の内容です。
この仏像は平安時代後期のものとされて説話の時代と合わないことや、鵜田の里が榛原郡にあるという記述など、説話とは矛盾点も多くありますが、ヒノキ一木割矧造の優美な顔や衣文の表現は、藤原時代の彫刻として見事なものです。
昭和33年(1958年)4月15日、静岡県指定文化財に指定されました。