「田代の郷」について
「田代の郷」は、ごみ焼却施設「島田田代環境プラザ」、温浴施設「田代の郷温泉伊太和里の湯」、太陽光発電施設「ソーラーパーク島田」、市営霊園「田代霊園」、多目的スポーツ広場「島田ゆめ・みらいパーク」を中心とした、広さ約38.8ヘクタールの自然に囲まれた区域です。
島田市田代地区は、もともとは山に囲まれた狭い盆地地形の土地でした。90年代後半にこの地区の開発事業が行われましたが、もともと自然が豊かな場所と言われ、埋め立て工事の途中でオオタカの営巣が確認されたことから、環境保全の機運が高まり、当時の事業者や市民、県、市が話し合いを重ね、当時の関係者たちは田代地区の自然環境保全にむけた基本方針を以下のとおりとしました。
・「特定種」「注目種」だけの保全に限らず、当該地域の自然環境を一つの生態系として捉え、この生態系の特性を極力損なわないこと。 ・改変前の「多様な里山環境」の復元 |
この二点をもとに埋め立て工事を行い、その後、約38.9ヘクタールの広さにわたる埋立地を中心に、市による「田代の郷整備事業」が行われました。平成16(2004)年から令和2(2020)年にわたる整備事業により、現在は島田田代環境プラザ(平成21(2009)年)、田代の郷温泉伊太和里の湯(平成24(2012)年)、島田ゆめ・みらいパーク(令和2(2020)年)などが整備され、「田代の郷」として市民に親しまれています。
そして、上記の方針に沿って進められた整備事業のなかでの工夫の効果を確認するため、市ではこの事業期間中、26年間にわたり猛禽類をはじめとする田代の郷周辺の生き物への影響を調査して、おおむね良好な環境を残すことができました。
「田代の郷」で生き物を守るために行った工夫
「田代の郷」の埋め立て工事の際には、生き物を守るために様々な工夫がとられました。これらの工夫を、生態系保全において取られうる主な対策の分類である保全、低減、代替に照らし合わせますと以下のようになります。
1.保全(特に守るべき場所を保全するために開発自体の規模を縮小し、開発による影響を小さくして保全を行う)
沢地保全 | 本来埋め立てる予定だった工事範囲をせばめ、伊太谷川源流部を中心とした沢地を完全に残すことにしました。また、埋立地の植物の一部をこれらの沢地に移植しました。 | ||
残存緑地 | 工事区域内の低い山は埋め立て後に残る山頂部分を削って均す予定でしたが、もともとの生息地を残し、そこに生える植物の種子がいずれ周りに広がっていくことを期待して残すことにしました。埋め立て工事で広く失われたアカマツーモチツツジ群集の植物を見ることができます。 | ||
2.低減(開発によって起こりうる野生生物への影響を小さくするために専用の設備などを設置する)
多自然川づくりの考えを生かした水路 | 埋め立て地の排水路ですが、一部に小動物が這い上がれるような坂をとりつけたり、水路の中に土留めを設置したりして蛇行や陸地が形成されるようにしました。 | ||
コリドーの設置 | 田代の郷を横断する道路の建設によって南北の森林の分断を低減するため、道路に生き物専用の陸橋を設置しました。定点カメラを使った調査では、特別天然記念物であるニホンカモシカをはじめとしてキツネ、アナグマ、ノウサギなど多様な動物がこの陸橋を使用していることが確認できました。 | ||
3.代替(開発によって失われる自然環境があるとき、その周辺に同様の環境をつくることで生物が生息できる環境を維持する)
モリアオガエルの産卵池 | 埋め立て工事で失われた水田の代替として、田代環境プラザ敷地内に池をつくりました。この池では、毎年20個程度のモリアオガエルの卵塊が確認できます。また、この池はトンボやイモリなどの生息地にもなっています。 | ||
ワンド水路再生 | 埋立地に新たに設置したコンクリート水路の一つに、わざと壁面に傾斜をつけたり側面に蛇籠を設置したりして流れに変化を与え、天然のワンド(淀み)に近い場所ができるように工夫しました | ||
こうした工夫に取り組み、また田代の郷の整備事業を進める間も県の機関などへ意見を伺い、調査を続けていくことで、大規模かつ長期的な土地利用工事にもかかわらず、おおむね良好な自然環境を維持することができました。
令和2年度田代地区猛禽類調査報告書
島田市で行った、田代の郷整備事業による自然環境への影響に関する報告書です。この調査は、田代の郷整備事業の終了により令和2年度調査をもって終了しています。
報告書本編1 (PDF 4.08MB) 報告書本編2 (PDF 8.05MB) 報告書本編3 (PDF 7.19MB) 報告書本編4 (PDF 4.37MB) 報告書本編5 (PDF 9.1MB) 報告書本編6 (PDF 6.81MB) 報告書本編7 (PDF 4.24MB) 報告書本編8 (PDF 2.03MB) |
田代地区の自然環境保全対策のPR
田代地区を環境教育の場とすることに向けた取組(令和4年度)
常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科と連携し、良好な自然を残した田代地区を使って、自然学習指導者や学校の授業などで生かせるように、学習プログラムや学習用リーフレットの作成を行いました。
学習用リーフレット「島田市田代の生き物と人々」(島田市オープンデータカタログサイトへ移動します)
「エモマップ」の作成(令和2年度)
常葉大学情報学部情報学ゼミナールと連携し、田代地区の自然環境保全対策を「エモい」という観点から発信する「エモマップ」を作成しました。
島田市田代地区の自然環境保全対策に関するPRのための調査を実施/情報学ゼミナール(外部リンク)